コンシェルジュノート

2013/10/16 再建屋 道元

第四十七話「リーダー財前」

 フロントマネージャーの財前は、前回のプロジェクトチームミーティングから少しずつ変わっているようであった。サービス向上チームの志村リーダーや売上向上チームの佐郷リーダー、経費削減チームの是町リーダーと積極的にコミュニケーションを取ろうとしていた。

 「志村さぁ。この前おまえがチームで言っていたアンケートだが、あれいつからやるんだ。早めにやっちゃおうぜ。」

 これまで、余計な仕事など見向きもせず、いつものフロント業務だけに専念していた

財前の姿とは異なっていた。たばこ部屋でフロントスタッフの鈴木と愚痴を言い合う回数も減っているようであった。

 カフェのアシスタントマネージャーの志村は、これまでにない財前からの問いかけが嬉しいようであった。

 「アンケートは、作成済みです。最終確認を各部署のリーダーに周知すれば、実行可能です。あと1週間もあれば大丈夫です。」

 「分かった。このアンケートは今回のプロジェクト活動のスタートを切る大切な取り組みだからな。気合い入れていこうぜ。」

 「かしこまりました。」

 志村は、すぐに踵を返してスタッフミーティングルームへと向かっていった。

 

財前は、最近売上向上チームリーダーの佐郷の様子が少しおかしいことが気になっていた。何かにつけて、財前と張り合ってくる感じがあった。

売上向上チームのアクションプランについて、財前から進捗を聞かれると、既にここまでやっていて、順調に進んでいるので大丈夫です、と言った具合に一方的に話をしては、すぐに立ち去ってしまうことが多くなっていた。それまでは、人のいいお坊ちゃんで誰彼問わず、人当たりのいい事が彼の一番の特徴だった。そのため、売上向上チームの他の2人のメンバーが余りやる気がない分、佐郷自身が頑張ってきた。しかしながら、最近その頑張りが少し空回りしているようであった。

 

しかし、心を入れ替えつつある財前にとって、佐郷のことは杞憂に過ぎなかった。それよりも、プロジェクトチーム全体をどうやってもり立てていこうか、その方に関心が強くなっていた。

 

 

 つづく