出口戦略(5)
条件変更を行った債権82兆円のうち2割が、来年度以降要管理債権ないし破綻懸念先債権にランクダウンしてしまうと仮定するとどうなるであろうか。そうなった時には、当然に金融機関は引当を積み増ししなければならない。82兆円の2割である16兆円に対して、仮に30%引当を積み増しするとすれば、約5兆円もの引当が必要になる。これは、すなわち同等の金額の金融機関の利益が吹き飛ぶことになる。先日の日本経済新聞の調査では、不良債権予備軍(すなわち要注意先債権)の金額は26.6兆円に上ると報道された。もし、この金額全てがランクダウンしたとして、新たに30%引当を積み増しするとすれば、その金額は約8兆円にも上る。すごい金額である。
体力のある金融機関であれば良いが、中小企業の主な取引先となる地域金融機関は概してそれほど体力のあるところばかりでは無い。だからこそ、政策パッケージと銘打った出口戦略が繰り返し訴えられるわけである。つまり、出口戦略とは中小企業を支援する一方、地域金融機関の救済の側面もあるのである。
つづく