Webサイトの運用~作って終わりの時代は終わり
《コンシェルジュコラム》旅館・ホテルのWeb戦略 (3)
第1回 「SEO対策の変質が、コンテンツの重要性を加速させる」で、近年の検索結果表示基準が、ユーザー目線で有用な情報が掲載されているサイトを重視する方向に変化していることに触れました。
また前回は、そのユーザー≒お客様の目線に立ったサイトにするためのプロセスとして、自社サイトのコンセプト作りをしっかりと行うこと、また社内のスタッフにも参加してもらうことがポイントとお伝えしました。
実は、このプロセスは、コンセプト作りの上だけでなく、その後のサイト運用においても、大きな意味を持っています。
連載最終回となる今回は、リニューアルしたサイトにお客様を呼び込み、売上につなげていく観点から、どのような取り組みが必要かについて、考えてみたいと思います。
(1) 自社サイトで顧客を呼び込むのに重要なのは、情報の「●●」
現状、多くの施設様が、数ヶ月~1ヵ月に1回程度、料理メニューの変更に合わせてプランの入れ替えを行う程度の更新頻度で、サイト運営を行われていることと思います。
一方で、第1回でご紹介したとおり、PCからスマホへの移行によって、予約のリードタイムはどんどん短くなっています。
その分、インターネットで提供される情報の「鮮度」がお客様にとって重要になっているのです。
鮮度のよい情報を提供するためには、どうしても、サイト運営にかける時間が一定以上必要となります。
また、提供する情報の「数」が増える分、限られたスタッフで運営していると、早々にアイデアが枯れてしまいがちです。
似たような投稿ばかりになってしまったり、更新そのものが行き詰まってしまったりで、結果として「ユーザー目線で有用なコンテンツ」が提供できなくなってしまいます。
こうした事態を防ぐため、
- サイト更新にかかる稼働を分散するとともに、
- より広い視点で、掲載する情報を集めていく
活動が、必要となるのです。
(2) テスト運用期間は、サイト更新の「●●」づくりの時間
実は、リニューアルの計画段階からスタッフの意見を募るのは、運用開始後、多くのスタッフにこのプロセスに協力してもらうことを視野に入れてのことです。
前回のコラムで、サイトリニューアルのスケジュールを立てる際、「テスト運用期間として1ヵ月を見込む」、とお伝えしました。
この1ヶ月間は、オープンまでに必要なコンテンツを積み上げると同時に、
- 社内の協力スタッフの役割分担を定着させ、
- 情報の選定や、文章の書き方、画像の効果的な使い方などについて経験値を上げ、
- システムの使い方に習熟する
ための期間でもあるのです。
したがって、このオープン前の1ヶ月間は、コンテンツを増やすことよりも、
「スタッフが協力し合ってサイトを更新する体制づくり」
に重点を置くとよいでしょう。
こうした社内の協力体制が整えば、コンテンツは日々、無理なく増やしていけるからです。
また、協力スタッフには、お客様と接する客室係やフロントタッフだけでなく、裏方となるレストラン・調理部門や、清掃、施設管理などの部門にも、加わってもらうことをおすすめします。
この協力スタッフの選定は、次に触れる、サイトに掲載する情報の選定に大きく関わってきます。
(3) 「有用な」情報でなく、「●●●●」情報をめざす
これまで何度も、これからの旅館・ホテルのサイトには、「ユーザにとって有用な情報」が掲載されることが重要だと述べてきました。
ですが、いったいどういう内容であれば「有用な情報」となるのでしょうか。
多くの方が、この点について難しさを感じていらっしゃることと思います。
「企画はそろそろネタ切れ。新しいプランを作るにもスタッフ側が追いつかない」
「料理の変更は三ヵ月に一度。それ以外の時期に、何を書けばいいのか?」
「庭の様子も、いつも同じような写真ばかりになってしまうし…」
「有用」という言葉の響きから、こんなふうに難しく考えてしまいがちかもしれません。
ここは少しハードルを下げて、「気になる」情報、と捉え直してみてはいかがでしょうか。
たとえば料理について。
とある割烹旅館様では、お子様向けの食事メニューでは、わざわざ塊り肉からミンチを挽くところからハンバーグをご用意されていました。
特にお客様にお伝えすることはされていませんでしたが、お子様をお持ちの親御さんであれば、こうした調理過程はとても「気になる」情報のはずです。
あるいはお風呂について。
温泉旅館であれば、源泉をどこかから引いて来ているケースが多いものと思います。
どんなふうにわき出ていて、どうやってお風呂まで届けられているのか。
または、お客様に快適にご利用いただくための温度管理や清掃はどうなっているのか。
または、サービスについて。
赤ちゃん連れのご家族向けプランは、以前に比べて一般的になってきましたが、その準備には、どの施設様もご苦労されていることと思います。
おむつやミルクは何を用意するか? アレルギー対策は?
食事場所はレストランと個室どちらにするか? おもちゃやプレイスペースはどうする?
サービスを形にするまでに、スタッフの方々で試行錯誤を繰り返して来られたはずです。
失敗談もあったのではないでしょうか。
お客様が受けるサービスや、できあがった料理、目に見える設備などは、お客様自身で確かめられますが、ここに挙げた情報は、確かめようがありません。
だからこそ、お客様にとって意味のある情報になるのです(裏方を支えるスタッフの方に、サイト運営に関わっていただくのも、そのためです)。
- 最終形ではなく、プロセスを
- ハコ(客室、設備、庭園…)ではなく、ヒト(スタッフ)を
- セールスポイントではなく、そこに至るストーリーを
ぜひ、これらの観点から提供すべき情報を検討してみてください。
最後に
「旅館・ホテルのWeb戦略」と題し、3回にわたってお届けいたしました。
インターネットをめぐる技術の変化、サービスの多様化によって、旅館、ホテルの経営者様が検討すべき事項は、広く、複雑になる一方です。
ですが、
- 常に「お客様の立場に立って考える」こと。
- そのために、スタッフが「一丸となって」「全力で」取り組むこと。
これらができている旅館、ホテル様であれば、必ずやお客様からの支持が得られる、という点では、インターネットも、これまでのリアルでのサービスと変わりありません。
このコラムが、一人でも多くのお客様に貴館のよさをご理解いただき、ファンになっていただく上での参考になれば幸いです。
◇ 次回予告 ——————————————————————-
次回から3回にわたり、弊社コンサルタント 遠藤光輔による「旅館・ホテルの人材採用」に関するトピックをお届けします。
お楽しみに!