コンシェルジュノート

2011/07/19 再建屋 道元

第八話「全体ミーティング」

 今日は、月に一回の役員及び各部署の部門長及びマネージャークラスが集まる全体ミーティングであった。通常司会進行は折伏総支配人であったが、今日は道元自身がその指揮をとっていた。しかしながら、いつものように全社の損益状況と各部署から現状報告及び今後の見通しについて無味乾燥な報告のみが各部署から上がってきた。各部門長は淡々と報告をして、そこに計画との乖離を分析したり改善策を打ち出したりすることなど無かった。計画という文字が頭には全くないようであった。

 「どうして売上が下がったのか、教えてもらえますか。」

 「原因はよく分かりませんが、競合先とチラシの配布時期が重なったことや紙の品質が他社よりも劣っていることが主な要因だとは思いますが・・・。」

 道元が各部門長に同じような質問をするたびに、自社ではなく周りの環境の変化を言い訳にしているような返答に終始していた。

 そんな虚しい時間が過ぎ、ひとしきり各部署の報告と道元からの同じような質問が終了した。それを待っていたかのように矢継ぎ早に各部門長は席を立とうとしていた。社長の最後の挨拶も聞かないままに・・・。

 

 「ちょっと、待て。」

 

 今までに無い道元の図太い声が狭く冷たい部屋に響き渡った。そして、席を立とうとした誰もが、これまでの温和で、何をしたいのかよく分からないまま一緒の時を過ごしていたリーダー、道元の荒い言葉遣いに驚いた。

 「君たちは、それで楽しいのか。それが君たちの仕事なのか。誰でも良いから教えてくれ。」

 数分だろうか、重苦しい時間がただ過ぎていった。出席している誰もが、うつむき加減で、早くこの時が過ぎ去ることを待っているようだった。

 

 「あなたに何が分かるというのですか。どうせ、我々は雇われの身です。ただ与えられた仕事をしていれば良いんですよ。道元さんだって所詮雇われ社長でしょ。いずれこの場所からもいなくなる。そんな人に偉そうに言ってもらいたくはありませんね。誰だって、楽しく仕事をしたいですよ。誰だって、こんな状況が良いとは思っていませんよ。」

長瀬営業支配人が堰を切ったように話し始めた。

「でも、我々が何をしようと、結局はオーナーの池田社長の考えで決まってしまう。我々の考えなんてどうせ何も採用されないんですよ。やっている意味が無いじゃないですか。」

 周りにいた部門長たちは、かすかに頷いているように見えた。

 つづく