スーパーホテル②
翌朝、仕事の都合で少し遅いチェックアウトのため、セルフ式の食堂でスタッフと打ち合わせをしていた。9:30頃であろうか。いつの間にか、その食堂の近くにあるパブリックスペースにハウスキーパーのスタッフとフロントスタッフが一列に並び、社員らしき男性を取り囲んでいた。恐らく社員はこの男性のみで、フロントは比較的若い女性であったが、それ以外のハウスキーパーのスタッフは、50代以上の女性が中心であった。つまり、運営はパート社員が中心になって行われていることは明確であった。
私も前職のホテルにおいて総支配人をしていた際に、100名ほどのスタッフを抱えていたが、そのうち正社員と契約社員を合わせても10名ほどに過ぎず、それ以外の90名はパート社員・アルバイト社員であった。いかにパート社員やアルバイト社員を戦力にすることがホテル運営において重要(収益的にかつ顧客満足的にも)であるかを身にしみて分かっているつもりではあるが、このミーティングに参加しているパート社員の目が輝いていることに驚いた。いわゆる「やらされ感」が感じられなかった。
「経営理念、私達は顧客の要求を最優先に考え、常に安全・清潔・ぐっすり眠れるをモットーに低価格で高品質なご宿泊を提供していきます。顧客に満足していただく為、私達はひたすら顧客の要求に合わせて自分を変えていかねばなりません。現地現場主義で、顧客絶対主義に徹します。」男性の声に続いてスタッフが大きな声で復唱していた。経営理念の唱和が終わった後、男性は言葉を続けた。
「客室清掃は、客室を清潔にするだけでは十分とは言えません。お泊まりになるお客様が快適に過ごされることが重要なのです。そのためには、・・・・。」
男性は20代だと思われるが、その自信に満ちた態度と大きく張りのある声が頼もしく思えた。
パブリックスペースでこのような朝礼が行われることには少し違和感を覚えたが、これも割り切りであろう。また、品質保持のこだわりのアピールかも知れない。それはともかくとして、このような朝礼が毎朝行われていることや経営理念の浸透、サービス品質へのこだわりが日常から行われていることが驚きであった。そして、先ほど感じたスタッフの目の輝きが、このような日常の取り組みに裏付けされていることも理解できた。
スーパーホテルは、割り切ったオペレーションであるが、顧客に感動を与えるために必要な従業員の意識や行動を醸成していくためには、努力を惜しまない、そんな風土を感じた。そして、これがスーパーホテルの真の強さを表しているのである。
つづく