コンシェルジュノート

2011/02/02 コンサルタントコラム

ホテルオーナーの視点を考える①

ホテルの経営機能の分離(週刊ダイヤモンドの記事から)

 

 今週の週刊ダイヤモンドに「激変!日本のホテル」と題した記事が掲載された。3年ぶりに1万人にも及ぶアンケート調査から浮き彫りにされたホテルの現状について書かれた記事である。

 メイン記事は、1万人ユーザーが選ぶ日本ベストホテル100であるが、1位が帝国ホテル、2位がザ・リッツ・カールトン大阪、3位がリーガロイヤルホテルなどといった有力ホテルが選ばれていた。帝国ホテルは泊まってみたいホテルとしても1位に選ばれており、圧倒的なプレゼンスを発揮していた。

 これはこれで面白いのだが、今回の記事の中でホテルの所有・経営・運営の機能分離における現況についての記載が更に面白かった。特に、森トラストの森社長のインタビューにある、「ホテルは儲からない。ホテルは都市開発の添え物として考えるべきだ。割増容積率を活用して、土地代がタダになって初めて事業として成立する」という発言が、現在のホテルビジネスの本質を言い当てていると感じた。元々収益性の高くないホテルだが、更に都心に立地するホテルは土地代を入れて考えるとリターンがどうしても低くなる。しかし、ホテルなどの公共施設を付設することによってビルの容積率が割り増しされる制度を活用することで、事業としてはあたかも土地代を考えなくても良くなる。つまり、高い土地代が含まれないため土地代を除くNOI(オーナーが得られる純粋なキャッシュフロー)÷総投資額が非常に高くなり、投資効率が高まることを意味している。オーナー側のこのような視点がありながら、ホテルの所有・経営・運営の機能分離が進んでいる。

 このような状況においては、所有・経営・運営それぞれのプレーヤーは、自社の利益を最大限得ようと対立することになりがちである。現在ホテル業界の概況としては、ADR(販売客室1室当たりの販売単価)は低下傾向で底に張り付いた状態のまま客室稼働率は若干持ち直しているものの、Rev.PAR(販売可能客室1室当たりの売上)は低いままである。所有・経営・運営の各プレーヤーの全体のパイが少なくなっている中でそれぞれが自分の取り分を出来るだけ増やそうとしているのである。

 

 つづく