コンシェルジュノート

2014/06/10 コンサルタントコラム

再生の失敗事例「根深い親子の確執」
《コンシェルジュコラム》ホテル旅館の再生を妨げるもの(3)

 地方の中型温泉旅館の事例である。
 既に元メインバンクが取り立て色の強いサービサーに債権を売却していた。連日そのサービサーの担当者が旅館に訪れては、どのように返済するのか、その具体的なプランを聞き出すべく執拗に迫っていた。

 旅館側は、サービサーへの返済を含めて再生計画を策定中のためもう少し時間が欲しい旨申し出て、何とか数ヶ月の猶予を得た。
 我々はデューデリジェンスを実施した後に会社と再生計画づくりに入った。特に現社長の息子である常務は前向きに計画策定に携わっていた。家業から会社へと変えていくという強い気持ちのある常務であった。
 経営体制においては社長が経営の第一線から引いて息子である常務にバトンタッチすることが謳われた。これは金融機関からの要望でもあった。

 にもかかわらず、いよいよ合意を得ようとした段階において、急に社長は事業承継を拒むようになった。
「息子が俺を追い落とそうとしている。まだ俺の目の黒いうちに息子の好きなようにはさせない」と言い出したのだ。
 それは、地元でも有力な旅館であり名声を失うことと役員報酬がもらえなくなることの恐怖感からのようであった。

 その後、大株主である社長は、息子である常務を解任した。結果、この再生計画は合意に至らず、雲散霧消となった。
 結果、他の金融機関もサービサーへの債権を売り渡すこととなった。現在も様々なサービサーから返済計画を出すように迫られている毎日である。

– 完 –