観光白書にみるインバウンド最新動向
《コンシェルジュコラム》インバウンド最新動向(1)(執筆: 塚平和実)
平成26年度版観光白書が6月に公表された。3部構成になっており、第1部は「平成25年度観光の状況」、第2部は「観光とオリンピック・パラリンピック」、第3部は「平成26年度観光施策」がまとめられている。観光に関する現状認識、海外事例、現状認識を基にした施策という構成になっており、観光に関わる事業者が全体像を把握するのに適している。
今回は第1部「平成25年度観光の状況」の中からインバウンドに関するポイントをみていく。
ピックアップするポイントは以下の3つである。
1. 国・地域別の訪日外国人旅行者はアジア諸国が4分の3を占めている
平成25年の訪日外国人旅行者は1036万と大台を突破した。内アジアが795万と約4分の3である。東アジアが65.6%(680万)と最も比率が高く、東南アジアが11.1%(115万)と続く。国・地域別ベスト5は、韓国246万、台湾221万、中国131万、香港75万、タイ45万である。竹島、尖閣の影響もあるものの、東アジアの勢いは健在である。また、東南アジア6か国(タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナム)の115万は対前年比48.3%と急速な伸びを示している。
2. 外国人延べ宿泊者数は33百万人に達している
平成25年の外国人述べ宿泊者数は昨年の26百万から33百万(対前年比126%)と大きく 伸び過去最高となった。日本人の述べ宿泊者数対前年比102%と比べても伸びの大きさがわかる。業態別では、旅館2百万(対前年比150%)、リゾートホテル4百万(対前年比133%)、ビジネスホテル10百万(対前年比125%)、シティホテル15百万(対前年比125%)である。ビジネスホテル、シティホテルのシェアが高く、またすべての業態にて対前年プラスで推移している。
3. 地方ブロック別外国人述べ宿泊者数伸び率は沖縄、北陸信越、北海道が大きい
地方ブロック別外国人延べ宿泊者数伸び率(対前年)は沖縄が74.5%と最も大きい。那覇国際便拡充やクルーズ寄港増が要因と考えられる。北陸信越は61.5%であり、立山黒部アルペンルート、白馬、志賀、野沢、妙高のスキー場(オーストラリア)等の好調さが寄与している。北海道は51.6%であり、新千歳空港~バンコク線毎日運航、ニセコエリアの好調さ等が挙げられる。全ブロックの伸び率平均は29.8%であり、日本人延べ宿泊者数平均4.0%を大きく上回っている。
以上3つのポインを整理すると、
(1) 訪日外国人旅行者はアジアが4分の3を占め、中でも東南アジアの伸長が著しい
(2) 外国人宿泊者数は各業態とも増加傾向である
(3) 外国人宿泊者数伸び率は地方によってバラツキがある
ということになる。ビジット・ジャパン事業等の施策が奏功し、着実にインバウンド市場が拡大していることが窺える。
ところが、「我が宿には(我が観光地には)外国人のお客様がやってこない」「実際に来ちゃったらどう対応していいか判らない」。そんな話をよく耳にする。
では、観光事業者としてどのようなアクションを行っていけばよいか。筆者は「大きなヒントが観光白書に描かれている」と考えている。次回以降はそのヒントを探っていきたい。