個々の観光事業者が取り組める施策について考える
《コンシェルジュコラム》インバウンド最新動向 (3)
(執筆: 塚平 和実)
本特集も今月で最終回である。前回は、観光白書 第3部 観光施策から「訪日外国人旅行者数を増やすために国(=観光庁)が実施すべき施策をみてきた。
その中では「第5章 外国人旅行者の環境整備、第2節 滞在しやすい環境の整備」が注目である。ここに悩み解決のヒントがあると考えられる。
特に個々の観光事業者がインバウンドを取り込む際に参考になる施策として
1. 多言語化対応の改善・強化のためのガイドライン策定
2. 無料公衆無線LAN環境の促進
3. 外国人旅行者向け消費税免税制度の拡充
が挙げられる。
今月は上記3施策について、個々の観光事業者としてどのような取り組みが出来るかを考えていきたい。
1. 多言語化対応の改善・強化のためのガイドライン策定
平成26年3月観光庁より「多言語化対応の改善・強化のためのガイドライン」が公開されている(上記ワードで検索すればすぐに見つかる)。ここでは美術館・博物館、自然公園、観光地、道路、公共交通機関等において多言語対応を行う際のガイドラインが示されている。
この中で実践的にすぐに活用できるのが「具体的な対訳語」である。観光地などでよく出てきそうな用語、案内、注意喚起が英語、中国語、韓国語の3言語でまとめられている。
施設に敷設する案内表示、スタッフが行う訪日外国人旅行者とのコミュニケーションなどで使えるものが多くあると思われるので、一度ご覧いただきたい。
2. 無料公衆無線LAN環境の促進
スマホを中心としたモバイル端末は旅行のお供として欠かせない存在となっている。訪日外国人旅行者も同様で、スマホ片手に街を歩く彼らの姿を見かけるのも日常風景になっている。スマホは旅先で必要な情報を入手するための必須ツールである。
彼らは観光施設、宿泊地、交通手段、ショッピング、食事など様々な情報を求めている。今や通信環境が無い観光施設、宿泊施設はそれだけで訪問先候補から外れてしまう可能性もある。したがって、インバウンド誘客のための基本インフラとして通信環境整備は必須であると考えられる。
と言っても、無線LAN環境整備はそれなりに費用がかかる。観光事業者単独で導入が難しいケースもあると思われる。
その場合には、観光地全体として導入する方向はないのか、行政の補助金・助成金などを活用できないかなどを検討しながら、通信環境整備を模索していく方法もある。また以前に比べると設置コストも大幅に下がっている。
「お金が無いからウチではちょっと・・・」とあきらめないで、まずは出来ることから取り組んで欲しい。
3. 外国人旅行者向け消費税免税制度
「ショッピング」と「食事」は旅行における大きな楽しみ。訪日外国人旅行者にとっても同様である。特にショッピングは訪日外国人旅行者消費全体の30%を占めており、アジア地域を中心にショッピングへの期待が高い。
彼らと関係が深い免税店について最近大きな動きがある。それは、免税対象品目の拡大である。従来免税対象外であった食品類、飲料類、化粧品類といった消耗品などすべての品目が免税対象となる。また、利便性の観点から免税手続きも簡素化される(平成26年10月より実施)。
つまり、みやげ品店、旅館ホテルの売店など食品類、飲料類を中心に販売していたところでも、免税扱いで訪日外国人旅行者が手軽にショッピング可能となる。この機会はぜひ活用していきたい。
地方運輸局、経済産業局に「免税店相談窓口」が開設されているので、まずは相談からスタートすることをおススメする。いずれ免税店が相当程度拡大されるにしても、できるだけ早く自らの店舗が免税店となることで、優位性を確保していくことが重要である。
観光白書には、個々の観光事業者が事業の方向性を考えるうえでヒントが点在している。
本特集が方向性や施策の検討をすすめていくための端緒となればありがたい。