第六十六話『もも銀行への反旗』
朝倉社長と月野常務は、もも銀行会津支店を訪れていた。ここ会津に長い冬の季節の到来を告げるように紅葉した大銀杏の真っ赤な葉がひとひらこぼれ落ちていた。もも銀行会津支店のそばにあるこの大銀杏は樹齢500年とも言われ、地元で […]
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朝倉社長と月野常務は、もも銀行会津支店を訪れていた。ここ会津に長い冬の季節の到来を告げるように紅葉した大銀杏の真っ赤な葉がひとひらこぼれ落ちていた。もも銀行会津支店のそばにあるこの大銀杏は樹齢500年とも言われ、地元で […]
メインバンクであるもも銀行の企業サポート部長の岡島孝平は、道元を花やしきに送り込んだ張本人であった。 もともと岡島部長は、ある地域再生ファンドに部長として在籍しており、旅館の再生案件でターンアラウンドマネージャを探して […]
上田総支配人は、今日も女将に呼び出されていた。それも仕事のことではなく、切通支配人のことで日々呼び出されることに正直うんざりし始めていた。 「切通支配人にはきちんと伝えてくれた。もう現場を乱さないで、って。」 「ええ、 […]
「道元さん。パワハラはまずいんじゃないでしょうか。福島の片田舎とはいえ、パワハラは現代において会社のコンプライアンスが問われるほどの重大な問題です。しかも、うちは、この会津の旅館としては非常に古い歴史も持っている有力な会 […]
森重営業部長は、部下への叱責に対して道元に咎められたことを思い出していた。普通の人はもちろんだが、50歳を過ぎてスタッフの面前で怒られることはなかなかない。ましてや自分の勤めている旅館の中で、上司とは言え新参者に怒られ […]
「なんでお前はいつもそうなんだ。取れるはずの予約を失ってしまったじゃないか。」 フロントバックの営業部隊のデスクで、森重部長は部下の営業担当者をこれ見よがしに怒鳴っていた。他のスタッフは、また始まった、というような顔を […]
いつものように朝礼が終わった後、女将は切通支配人を呼び出した。お客様のチェックアウトも終わり、館内の特にバックヤードは昼間なのに薄暗く静かだった。 「支配人。あなたはフロントと内務をしっかり見てくれていればいいの。あま […]
会津のお宿花やしきは、創業60年の会津地方においては老舗であり、古くから地元の名家であった。先代の社長は町会議員が長く、地元選挙区から出馬した衆議院議員の後援会会長でもあった。そのため、政治力も同業他社の社長とは比べも […]
道元の目の前には、主として管理部門を統括している月野常務と、現場を統括している上田常務総支配人が座っていた。 「震災前から売上は低下傾向。しかし原価や人件費と経費が減少していない。結果的に営業キャッシュフローは低下して […]
「立川さん。それは仕方が無いでしょう。我々だってこれまで厳しい環境の中、血のにじむような思いをしながら旅館経営をしてきたんだ。そんな中、東日本大震災が起き、追い打ちをかけるように原発事故まで発生したんだ。このような環境で […]