第三十四話「地銀からの依頼」
まだ残暑の厳しい日が続いていた。 東日本大震災による原発事故の余波から、全国的に今夏も節電を強いられていた。公共施設はもとより飲食店やショッピングセンター、コンビニなどの商業施設も設定温度を高くせざるを得ず、利用客はう […]
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まだ残暑の厳しい日が続いていた。 東日本大震災による原発事故の余波から、全国的に今夏も節電を強いられていた。公共施設はもとより飲食店やショッピングセンター、コンビニなどの商業施設も設定温度を高くせざるを得ず、利用客はう […]
早樹は、呆然とした。 「どうして・・・。」 早樹と美子は、いつものように夕食の片付けをしていた。お客様の行き交う音が少なくなる時間帯のパントリーは、少し寂しげであった。目の前の食器洗浄機の廻りには、ビールやお酒が少 […]
女将とコミュニケーションを取る場所は、いつもチェックアウトが終わり、物静かでどこか憂いも感じられるフロント前のロビーの隅っこだった。今日は、梅雨も明けそうなほど強い陽光が海に差し込んでいた。この時期の海は、日に日に眩し […]
「いいですか、まずはお客さまを空いているお席にお通しします。もちろんフロントカウンターでも良いですが、ロビーやラウンジのテーブルなどどちらでも良いです。お客様は当館にいらっしゃるまでに、車や電車の移動でお疲れになっていま […]
仲居がチェックインを行うという新たなサービスに対する仲居頭の否定的な発言から、しばらく沈黙が続いた。 「やっぱり難しいかな。」 フロントスタッフが小さくつぶやいた。 「でも、お客様のためになることだったら、どうにかして […]
いつものとは違うチェックインの光景だった。 あるお客様は、今まで通りフロントカウンターでチェックインをしていたが、あるお客様はロビーのテーブル席で、あるお客様はロビーに隣接したラウンジでチェックインをしていた。 先 […]
あの朝礼から数日が経った。 女将を初め、従業員に戸惑いもあったが、少しずつ自身の役割や組織としてのあり方が変わってきたことに慣れてきているようにも見えた。それと同時に、皆が感じていたストレスや妙なプレッシャーから解放さ […]
昨晩チェックインした中国からの団体様がお発ちになる頃、ロビーは賑やかな中国語が飛び交っていた。日本人の添乗員を数人の中国人が取り囲んでいた。何やら、今日の観光ルートを変更して欲しい、どうにかしろと言った内容のようであっ […]
道元は、お手上げの仕草をする鷺沼部長に向き合っていた。 「鷺沼部長は、どうされるんですか。このままで良いとは思っていないんでしょう。」 「そりゃそうですよ。女将があっちこっちで、気まぐれな指示を出し続けると、この旅 […]
フロントバックでは、営業スタッフとフロントスタッフ数名が鷺沼営業部長を取り囲んでいた。真ん中に陣取る鷺沼営業部長は、険しい顔をして廻りのスタッフを見回していた。 「鷺沼部長、売れる日にこんなに安く客室を販売していたら、 […]