第二十四話「女将の想い」
毎日繰り返されるチェックアウトの喧噪。今日は、いつもより波が高いようである。慌ただしい人の動きの背景には、白い波頭が立っていた。 チェックアウトも落ち着き、いつもの朝礼も終了した後、道元は女将を呼び出した。 「いつ […]
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毎日繰り返されるチェックアウトの喧噪。今日は、いつもより波が高いようである。慌ただしい人の動きの背景には、白い波頭が立っていた。 チェックアウトも落ち着き、いつもの朝礼も終了した後、道元は女将を呼び出した。 「いつ […]
いつものように厳粛な雰囲気の中、朝礼が行われていた。女将の笑顔と厳しさの入り交じった態度とスタッフの従順に頭を垂れる態度が対照的であることに、道元は気づいた。今まで、何度となく見てきた光景であったが、少しの違和感を覚え […]
「もう少し詳しく聞かせてもらっても良いかな。」 道元は、少し身を乗り出して早樹に向き合った。 「その・・・、うまく言えないんですけど。一昔前であれば、どんなに苦しくてもみんなで頑張ろうって、そんな雰囲気があったんです […]
宴会を終えたお客様は、それでも小腹が空いた者はラーメンをすすりに、飲み足りない者はラウンジへなだれ込み、騒ぎたい者はカラオケルームへと吸い込まれていった。旅館としては、出来るだけここでお金を使ってもらうことが大切であり […]
いつものように道元は、7時に出勤してからすぐに館内を巡回し始めた。時間の前後はあるものの、必ず行う日課であった。社長自ら行うことはないのだが、どうしてもホテル総支配人時代の癖が抜けなかったのだ。いや、逆に毎日巡回しない […]
鷺沼営業部長が憂鬱そうな顔をして、帳場に戻ってきた。予約台帳にお客様の情報を書き写していたフロントスタッフが挨拶したにも関わらず、気もそぞろにパソコンに向かった。 「あら、鷺沼部長、お帰り。営業ご苦労さま。それでエー […]
当館では、年に4回、つまり季節ごとに基本となるお献立を変更する。 ここ房総半島は、他に負けないほど魚が豊富なエリアである。伊勢エビは、この周辺では房州エビと言われており、そのほとんどは築地に出荷されて伊勢エビとして取 […]
「本日のお客様のご予定です。宿泊者が125名、そのうち、○TBさんの募集団体が2つ、○NTさんの募集団体が1つとなっています。団体様以外では、○天さんと○らんさんからのコマ客が23名様です。この前、○らんさんご利用のお […]
「まあ、櫻井社長。遠いところからおいで頂きまして、ありがとうございます。」 何時に到着するか連絡をしていないにも関わらず、ロビーに入った瞬間女将らしき女性が道元を出迎えた。凛とした姿勢で楚々と歩き、きれいにまとめ上げ […]
道元は、千葉県の房総半島に来ていた。先週までいた伊勢志摩の英虞湾を臨む地域とは、海に近いという点以外は全く異なる様相を見せていた。伊勢志摩は、リアス式海岸が続き、複雑な海の姿が夕日に映えて深い情緒を与えてくれていた。一 […]