第十四話「旅立ち」
「・・・。と言うわけで、私は今月いっぱいで社長を退任することになりました。今まで、皆さんに良くして頂いて感謝しています。」 いつものミーティングの最後に、道元が唐突に話し始めた。 さあ、これから今日もお客様をおもて […]
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「・・・。と言うわけで、私は今月いっぱいで社長を退任することになりました。今まで、皆さんに良くして頂いて感謝しています。」 いつものミーティングの最後に、道元が唐突に話し始めた。 さあ、これから今日もお客様をおもて […]
「道元さん。本当に退任されるんですか。我々は、まだ道元さんが居ないとだめなんです。まだ教えてもらうことがたくさんあるんです。」 長瀬営業支配人が、道元に詰め寄っていた。 数日前、長瀬営業支配人は、新規顧 […]
部門間の連携が取れず硬直的になっていた組織が、日を追う毎に柔らかくなり、それはまるでお客様の要望を吸い取るスポンジのようにまでなっていた。 調理場の対応に頭を悩ませていた女性フロントスタッフも、最近は表 […]
このリゾートホテルは、確かに過大な借入を行っており金利負担も大きくなっていたが、バランスシートを大きく悪化させるほどの負債ではなかった。それは、やはり安乗興業からの資金がある故のことであった。安乗興業がスポンサーでいる […]
「いつ頃からか、俺たちは自分のことしか考えなくなっちまったんだな。」 突然、和食レストランの板長が、どこを見るのでも無く、誰に話しかけるでも無く力なく話し始めた。 「私たちは、お客様のために美味しい料理を出そうと、 […]
長い静寂を破る長瀬営業支配人の言葉が、冷たい会議室に響いた。 社長の道元を非難する言葉を投げつけた長瀬営業支配人を、道元は笑顔で見つめていた。 「私は、皆さんの本当の言葉を知りたかった。長瀬支配人の言葉は、本当なの […]
今日は、月に一回の役員及び各部署の部門長及びマネージャークラスが集まる全体ミーティングであった。通常司会進行は折伏総支配人であったが、今日は道元自身がその指揮をとっていた。しかしながら、いつものように全社の損益状況と各 […]
「道元社長の仰ることはよく分かります。我々だって、臨機応変に対応したいですよ。ですが、こうしょっちゅう食数の増減があると、どれが本当の数字か分からずに全て疑心暗鬼になってしまって・・・。ロスが出るのも嫌なので最小限の仕 […]
折伏総支配人は、温和で人当たりの良い人間であった。そのため、お客様からの評判も良く、その接遇能力には定評があった。レストランの常連である地元のおばあちゃんは、決まって「折伏さんはおるかね。」とレストランスタッフに声をか […]
道元がこのホテルに来て、はや1ヶ月が経とうとしていた。少しずつであるが、ホテルで働くスタッフの特性が見えてきていた。どのスタッフも目の前にいらっしゃるお客様を大切にする気持ちが強く、洗練はされていないものの十分におもて […]